HOUSE IN YAMAMI
富山県南砺市井波地域で移住起業家が集まる話題のエリア「中京通り」に面する、建築家の自邸のリノベーション計画。
対象物件は、築30年以上経ってはいたが趣のある古民家というわけでもなかった。むしろヴィンテージ感を活かすデザインというより、今まで解体&更地化されることの多かった昭和の時代に建てられた無価値だと捉えられがちな中古物件を、現代の生活に寄り添う形で文化性も機能性も上げられないかと考えた。
敷地高低差が1m近くある土地に建つ住宅、あえてその高低差を活かしたスキップフロアとして計画。温室空間を兼ねたエントランスからダイニングスペース、リビング、バスルーム、ベッドルームと一筆書きの連続した空間構成にしつつ、極力間仕切りを設けない大きなワンルームの計画とし、そのレベル差によってゆるやかにパブリックからプライベートへのグラデーションを高めている。
また、そのスキップフロア構成の為に新設された床レベルと既存床の差を活かした、床下空調を設置し、床下空間を通って排出される温風は2層吹き抜け空間をシーリングファンによって循環させることにより、新設の樹脂サッシや断熱材により気密性及び断熱性を高められた内部空間では真冬でも上下階一定の快適な温熱環境を得られる結果となった。
さらに現代的な生活のなかに自然な形で「手仕事」の美しさを介入させられないかと考え、木彫の技術を活かしたオリジナルプロダクトも開発。照明器具からテーブル、建具、手摺、ドアハンドルまで全て地元の職人たちと制作することで、今までにない趣と「肌感」のある空間に仕上がった。
今回、様々な試みをおこなったが快適性を犠牲にしない「暮らしの装飾/工芸」の新たな希望を見出せたような気がしている。身体だけでなく精神的にも豊かになれる、そんな建築を目指す指針となった。
プロデュース&プロジェクトマネジメント
山川智嗣(CORARE ARTISANS JAPAN)
建築デザイン
山川智嗣、山川さつき(CORARE ARTISANS JAPAN)
照明器具IPPAデザイン
大治将典(Oji & Design)
建築施工
小林佳菜子(藤井工業)
ランドスケープデザイン
根岸新(根岸造園設計事務所)
木彫(照明IPPA+手摺)
前川大地(井波木彫工芸館)
木彫(ドアハンドル+丸テーブル)
田中孝明(トモル工房)
造作家具
工藤悠市(Indigo Furniture)
和紙照明制作
石崎雄世(石崎家具)
カーペット
堀田将矢(堀田カーペット)
建具
伏木満広(伏木建具)
特殊塗装
山本武良(ヤマトコ)
写真
大木賢(nando)