木彫刻のまち・南砺市井波地域の路地裏に位置する、かつて英会話教室を営んでいたRC造２階建をリノベーションした「まちのパン屋さん」の計画。

オーナー兼パン職人でもある窪田直也さんは、東京都内の有名店で修行を積み、20年に故郷でもある富山県にUターン。同じくパン職人の妻・由貴さんと井波のまちが気に入り移住をきっかけに起業した。移住当初、直也さんは、派手さはないが毎日食べても飽きのこない、食卓に並ぶパンをつくりたい、そんな輪が広がって、年輪のように歴史が積み重なっていくパン屋さんを目指したいと仰っていたのが印象的で、昔からあるような、でもこの先もずっとそこにあるようなパン屋さんを目指した。

また、素材も地元のものにこだわり、顔が見える生産者さんから仕入れて安心して食べてもらいたいとの思いもあり、工事に携わった人はすべて井波の職人で構成し、まち全体で愛着を持ってもらえるようなプロジェクトチームで臨んだ。デザインは、夫婦２人の物腰柔らかい性格を表現し、入隅と出隅の面をとって、柔らかい曲線で仕上げた。また、極力出どころがわからない建材を使用せずに、人研ぎのカウンターや手触りのある塗壁等、昔からある技術を用いて全体を構成するように努めた。

年を追うごとに、色が落ち着いて、ツヤが出て、まるで年輪のように成長していく。そんなお店になっていくことを願っている。