SABUROMARU DISTILLERY BLENDER ROOM AND WORKSHOP
北陸の豊かな水と冷涼な気候に育まれてきた蒸留所の核心に、「ブレンダー室」をあえて外界へひらく。若鶴酒造内に位置する北陸最古のウィスキー蒸留所・三郎丸蒸留所のブレンダー室及びワークショップスペースの計画。
クローズドな研究室で行われる繊細なブレンド工程を、来訪者がそっとのぞきこめる場所へと再定義した。中心に据えたのは、組子細工を纏ったガラスのタワー〈Glass Cylinder〉。多彩な原酒ボトルが宙に浮かぶかのように並び、熟成樽の香りがほのかに滲む。透過する光と陰影が折り重なり、見学者の高揚感を誘いつつ、研究エリアの視線をやわらかに遮るファサードとして機能する。
ワークショップスペースでは、ジャパニーズホワイトオークの一枚板を贅沢に用いたカウンターが来訪者を迎える。指先に伝わる木肌の温もりが、クラフトウィスキーの手仕事を静かに語りかける。ここでゲストは、自らの舌と香りの記憶を頼りにオリジナルブレンドを創り上げる。樽で時を重ねるウィスキーと、一期一会の体験が交差する舞台だ。
空間全体は、洋酒文化を背景にしながらも、茶室が備える“間”と“静謐”を内包する。左官壁を感じさせる壁の仕上げ、そして組子の繊細な格子。洋と和がせめぎ合うのではなく、ともに呼吸することで、日本の蒸留所ならではの凛とした佇まいを紡ぎ出した。
ここは単なる見学動線ではない。蒸留家の思考が滲む“研究所”と、ゲストの感性が目覚める“体験の場”が、ガラスの呼吸を媒介に緩やかに重なり合う。ウィスキーが樽の中で対話を続けるように、人と職人、伝統と革新が響き合う…そんな新しいブレンダー室が誕生した。
プロデュース&プロジェクトマネジメント 山川智嗣(CORARE ARTISANS JAPAN)
建築デザイン 山川智嗣、山川さつき(CORARE ARTISANS JAPAN)
グラフィックデザイン 中山真由美(ファイン・プロジェクト)
建築施工 中村康一、酒谷美桜(藤井組)
造作家具 北田悠典(キタダ家具)
組子製作 谷端信夫(タニハタ)
特殊塗装 山本武良(ヤマトコ)
写真 大木賢(nando)