富山県南砺市井波地域に位置する、かつて地域に愛された化粧品店をリノベーションした新たなヘアサロンroiの計画。囲炉裏を意味するこのヘアサロン名は、温もりや集いの場を表したいというオーナーの想いを象徴している。

デザインに取り組むにあたり、化粧品店の記憶を大切にし、既存のディスプレイ棚や大きな鏡などを再利用することで、懐かしさを感じさせる空間を創出。柱の塗装などの化粧も極力残し、既存の壁面を解体しないよう配慮された設計を施した。

空間の中心には、ヘアカット台を組み込んだ大型の什器を設置。この什器は正方形のプランにあえて45度回転させて配置され、三角形の隙間空間を生むことで、各スペースが個室のように仕上がり、他のお客様の視線を気にせずにリラックスできる居心地の良い環境が提供されている。配置は建物の角から見た際、正面にくるようになっており、全体の調和を図ることが意図している。ヘアカット台の高さは1200mmに設定。座っているお客様同士の目線が合わないようになっている一方で、立っているスタッフ同士は目線が合うため、スムーズな連携が可能だ。また、シャンプースペースには段差が設けられ、少し低めの天井と落ち着いた照明で、リラックスできる空間が実現されている。

私たちいつも機能性と美しさを両立させることを重視している。色使いや素材選びにもこだわり、訪れる人々に心地よさを提供している。ただデザインとして重要なのは、ここは単なる美容の場ではなく、地域の人々が集い交流する場所としての役割を果たすことも目指している。まさに商店街の多くのシャッター店舗に新たな光を灯すランタンのような存在として、今後地域の人々の発展の道標に育っていくことを心から願っている。