AIZAWA WOOD WORKS GALLERY & SHOP
伝統工芸品にも指定されている輪島塗で有名な能登半島にある輪島市に計画された四十沢木材工芸のショールーム兼ショップの新築計画。
四十沢(あいざわ)木材工芸は1947年に漆器用素地の木地屋として創業。半世紀以上にわたって輪島塗の「縁の下」を支え続けてきた。しかし、全国的に漆器需要が落ち込み木地の発注も激減、そこで2019 年に二代目の四十沢宏治氏が手工業デザイナーの大治将典氏をブランディングディレクターとして迎えたことによりオリジナルプロダクトの生産を開始。四十沢木材工芸が持つ様々な木加工技術を活かし「木の麗しさ」を日常に提供する木地そのものの美しさを表現したプロダクトを制作・販売している。
計画地は、現在の生産工場の隣に位置していた創業地である旧工場。当初はそれをリノベーションして活用する計画だったが、詳しく調査してみると構造躯体の劣化が進んでおり、いつ倒壊してもおかしくない状態だった。次世代に木地制作の職人文化を継承していく場の在り方を模索し、次の100年に繋がる新築計画にシフトすることとなった。リノベーションではなくリカルティベイト(Re-Cultivate)、いままで継承してきた木地の文化をさらに昇華し、新たな文化を「耕す」ことのきっかけになる計画を目指した。
旧工場は、敷地いっぱいに建設されており窮屈なイメージだったので、新たな計画ではその棟の軸線上を活かした「ウッドストリート」と呼ぶ、四十沢氏が所有する山林から伐採・製材した能登産アスナロ材(能登ヒバ)を使用した木の路地を挿入、棟方向を現工場と合わせた平屋造りとすることで、それぞれの建物の周りにゆとりあるスペースを確保した。ウッドストリートの両側には四十沢木材工芸の「これまで:Origin」と「これから:Future」が配置され、壁面一杯に木地サンプル棚を設えたワークショップルーム:Originと、今後生み出されていく様々なプロダクトを体感できるショールーム:Futureを配置した。
また、その中間地点には光が降り注ぐトップライトを配したガーデンを計画し、それぞれの空間から滲み出てくる様々な活動の受け皿として、イベントの際には多くの人々が集うオープンスペースとして計画。かつてより在った庭石を束石として再利用することにより、創業の記憶を継承している。
竣工時はまだ耕したばかりの豊かな土壌のまま。ここからモノもヒトも芽を出し、光を浴びて大きく成長し、次の四十沢木材工芸を体験できる場所として大木(たいぼく)に育っていって欲しいと願っている。
プロデュース&プロジェクトマネジメント
山川智嗣(CORARE ARTISANS JAPAN)
建築デザイン
山川智嗣、山川さつき(CORARE ARTISANS JAPAN)
構造設計
田畠隆志(ASD)
什器デザイン(展示台、テーブル、ドアハンドル)
大治将典(Oji & Design)
ランドスケープデザイン
根岸新(根岸造園設計事務所)
建築施工
藤井圭一(藤井工業)
川端一也(川昭工務店)
造作家具及び什器制作
四十沢宏治(四十沢木材工芸)
石材加工
中島正士(中島石材店)
特殊塗装
山本武良(ヤマトコ)
写真
大木賢(nando)