KUMIKO-ZA Toyama Craft Lounge
KUMIKO-ZAは、富山駅前CICの1階に計画された、富山の組子メーカー「タニハタ」の新たなショールームである。富山駅からほど近いこの場所は、日々多くの人が行き交う都市の玄関口であり、富山を訪れる人々にとって最初に土地の気配に触れる場所でもある。これまで工房や建築空間の中で展開されてきたタニハタの技術を、より多くの人に開き、組子を通して富山のものづくりの深さを伝えるための場として計画が始まった。
敷地となるCICの1階は、商業施設の内部でありながら、通りに面した大きなガラスウィンドウを持っていた。しかし、その開口部は植栽によって隠され、まちとの関係が十分に生かされていない状態であった。本計画では、そのガラス面をあえて外部へと開き、ショールームを都市に向けた舞台として再構成している。通りを歩く人がふと足を止め、内部に広がる組子の重なりや職人の手仕事に目を向ける。そうした小さな出会いから、富山の工芸への入口が生まれることを意図した。
内部の計画においては、商業施設の既存のグリッドや区画にそのまま従うのではなく、ガラスウィンドウ前面の歩道に対して平行に組子パネルを配置した。これにより、空間の中にゆるやかな奥行きと場所性が生まれている。訪れる人は、まるで森の中の木々を抜けていくように、組子のレイヤーの間を進み、そのふもとで休み、語り合うことができる。外部から見ると、複数の組子パネルが層のように重なり合い、光や視線の角度によって美しい模様を浮かび上がらせる。
ショールームである以上、空間そのものが過度に主張するのではなく、主役となるべきは組子の技術であり、そこに宿る職人の息吹である。そのため、空間はできるだけ静かに設え、組子の精緻さや素材の表情が際立つように計画した。展示されるパネルはユニット式とし、入れ替えや構成の変更ができるようにしている。固定された完成形ではなく、訪れるたびに異なる発見や新鮮な驚きが生まれる、変化を受け入れるショールームを目指した。
メインカウンターの背面には、曲面で構成された大型の組子パネルを設けた。モチーフとしたのは、富山を象徴する立山連峰である。Toyama Craft Loungeという名の通り、この場所には、富山のものづくりの背景にある豊かな風土を感じさせる役割が求められた。立山連峰に抱かれた土地、その山々から生まれる水、暮らし、素材、技術。曲面によって構成された組子は、見る角度によって表情を変え、平面の模様を超えた立体的な迫力を生み出している。
また、組子の素材である木々を育んできた源泉として、富山の豊かな水を空間に取り込むことも大切にした。CIC側のエントランスには純銅製の水鉢を設置し、天井から吊るされた細い銅管から水滴が落ちる仕掛けとしている。水面に広がる波紋は、自然が生み出す一瞬の立体であり、その有機的な揺らぎが、組子の緻密で均整の取れた美しさをより際立たせている。木と水、技術と自然が向き合うことで、富山のものづくりが持つ奥行きを空間全体で表現した。
細かなディテールにおいても、職人の手仕事を感じられる設えを随所に施している。組子だけでなく、銅、木工、ガラス、和紙など、富山県内で活躍するさまざまな作家や職人の技術が空間の中に重なり合う。それぞれの素材が単独で存在するのではなく、互いに呼応しながら、富山という土地が育んできた手仕事の層(レイヤー)を形づくっている。
KUMIKO-ZAは、世界に羽ばたく組子メーカーであるタニハタの玄関口であり、同時に富山のものづくりへと人々を誘う入口でもある。ここで感じてほしいのは、完成された技術の美しさだけではない。その技術を育んできた富山の豊かな土壌や水、日々の暮らし、自然と共にある感性である。駅前という開かれた場所から、組子を通して富山の文化と精神性が国内外へと広がっていく。そのはじまりの場として、KUMIKO-ZAはまちに静かに開かれている。
プロデュース&プロジェクトマネジメント 山川智嗣(CORARE ARTISANS JAPAN)
建築デザイン 山川智嗣、山川さつき、杉木千咲都(CORARE ARTISANS JAPAN)
建築施工 立道歩泉(宝来社)
造作家具 谷端信夫(タニハタ)
特殊塗装 山本武良(ヤマトコ)
家具備品 工藤悠市(Indigo Furniture)
写真 大木賢(nando)