Bed and Craft OUKA
Bed and Craft OUKAは、Bed and Craftが開業10年を迎える節目に生まれた、7棟目となる一棟貸しの宿である。これまでBed and Craftは、井波で活動する木彫家や漆芸家、作庭家など、土地に根ざした作家たちと協業しながら、一棟一職人の思想をもとに宿をつくってきた。OUKAではその視点をさらに広げ、井波を入口に、北陸各地の工芸や手仕事へと触れていく滞在のかたちを構想した。
本計画のアートディレクション兼担当作家には、手工業デザイナーの大治将典氏を迎えた。大治氏はOji & Designを主宰し、日本各地の手工業や地域産業に深く寄り添いながら、器や道具、家具、ブランドづくりまでを一貫して手がけてきたデザイナーである。北陸の多くの工芸メーカーと協業を重ねてきた大治氏と空間をつくることで、OUKAは井波の木彫文化にとどまらず、北陸のものづくりを体験する入口となり、Bed and Craft自体の役割も広がっていくことになった。
既存建物の玄関扉部分は、あえてガラスウィンドウとすることで、まちに開かれたプレゼンテーションスタジオとして再構成した。1階北側は軒下空間として開放し、新たなエントランスを設けている。その場所にはアイキャッチとなる巨石を据え、建物に入る前から工芸的な緊張感と余白が感じられる空間とした。
エントランス正面に現れる和室は、現代における新たな和室のあり方を考えた場所である。簡素でありながら、細部には工芸的な工夫を散りばめている。名前の由来であるOUKA、すなわち桜花や謳歌のイメージから着想し、引き戸には桜を形どった特注の真鍮引き手を設けた。さりげない所作の中に、手仕事の温度が宿るよう意識している。
2階に上がると、大きなリビングルームが広がる。視線の先には大門川沿いの桜並木が続き、南面にはキッチンの機能を兼ねたロングカウンターを設けた。その上には、大治氏が手がけてきた器や道具が並ぶ。OUKAは、工芸をただ鑑賞するための宿ではない。手に取り、使い、元の場所へ戻す。そうした行為の中で、ものの美しさや作り手の思想を身体で味わうための宿である。飾ることと使うことがひとつの風景として溶け合い、工芸と共に生きる喜び、すなわち謳歌の感覚が静かに息づいている。
リビングには、現代的に解釈した大きな縁側を設けた。寝転ぶ、語らう、酒を飲む、外部テラスへ出る。用途を限定しない中間領域として、さまざまな行為を受け入れる場所である。その先には、大門川の桜を眺めながら過ごせる足湯スペースを設けた。和室、リビング、縁側、テラス、足湯がゆるやかにつながり合うことで、滞在の時間が流れていく。
OUKAの空間はシンプルでありながら、細かな設えはどこにも似ていない。まちに滞在し、道具を使い、手仕事の背景に触れる。その体験が、北陸の工芸と暮らしをつなぐ風景となることを目指した。
Bed and Craftはこれまで、井波というまちに息づく職人や作家の仕事に光を当て、一棟ごとに異なる工芸の世界を宿として表現してきた。OUKAは、その積み重ねの先に生まれた新たな試みである。井波の木彫文化を軸にしながらも、北陸各地に広がる手仕事や地域産業へと視野を広げ、宿という場を通して、工芸と人、まちと旅人の関係をもう一度編み直していく。
開業から10年を経たBed and Craftにとって、OUKAは単なる新しい一棟ではない。これまで培ってきた思想を受け継ぎながら、次の10年へ向けた可能性を示す場所であり、Bed and Craftの第二幕のはじまりを告げる存在でもある。工芸を鑑賞するだけでなく、使い、過ごし、暮らしの中で味わうこと。その豊かさを静かに伝えながら、OUKAは北陸の手仕事に触れる新たな入口として、これからのBed and Craftの物語をひらいていく。
プロデュース&プロジェクトマネジメント 山川智嗣(CORARE ARTISANS JAPAN)
建築デザイン 山川智嗣、山川さつき(CORARE ARTISANS JAPAN)
アートディレクション 大治将典(Oji Design)
建築施工 藤井圭一(藤井工業)
造園施工 根岸新(根岸造園設計事務所)
石材加工 瀧田龍也(滝田石材店)
造作家具
工藤悠市(Indigo Furniture)
六郎万康二(五十六製作所)
北田悠典(キタダ家具)
末松貴久(サボア)
特殊塗装 山本武良(ヤマトコ)
備品
二上利博(FUTAGAMI)
四十沢宏治(四十沢木材工芸)
今村肇(JICON)
福井賢治(Woodpecker)
前川大地(IPPA)
関野央也(TENON)
写真 大木賢(nando)